やっとというか、今更というか、スマホ。
季節の変わり目のただでさえ、身体の不調に嫌になっているのに、このスマホ、頭の不調に輪を掛けてくれるわ。
まぁ、洪水のように責め立てるＤＭやメールに負けて、やっとのスマホデビュー。
別に、電話とメールさえできれば、やがて来る寝たきり時代の枕頭台グッズとして充分だったのに。
80歳以上は、家族同伴を言われて第一のつまづき、息子氏に頭を下げて。
カウンターでは、経費計算ばっかり。
中国人の店員さん、お国で評価する気はないが、自分の算出に自信が無いらしく、いちいち上司にお伺い、確認。返る言葉が、どうも聞き取れない。
会話を日本語の漢字に変換しながら理解するのは、客の仕事になるありさま。
どないしたら、電話受けられます？
どないしたら、メールできます？　小金を貯めたバァサンなんだから、それだけでいいのに。

光ったりつぶやいたり　机上のこやつメ。
「電話やー」と叫ぶと二階から「落ち着いて―」。落ち着いていたら取れませんやろ。
押入れの奥にほうりこんでおきたい感じ。
しかし、世間のじっちゃんばっちゃん、すごいなぁ。
電車の中でも、スーパーの隅っこでもスマホ、もの馴れて。
今日、やっと、１１０番と１１９番の掛け方教わった。実際、発信はできないけれど、これ、８０バァサンには肝心なことなんよ。

秋の空の高さに、感動するヒマも気持ちもなく１０月スタート。

先月に続いて、料理本の断捨離。結局残ったのは、向田邦子さんを筆頭に作家さんの料理本。
いかにも紳士な池波正太郎さん、暮らしの手帖の料理がお好きらしい。
開高健　牧羊子ご夫妻の「おかず咄」はお酒の香りまでする。
週刊誌のエッセイ「アレもくいたい　コレもくいたい」の東海林さだおさんは、アレもくいたい、コレもくいたいと限度の有る胃袋が悔しい。
沢村貞子さんの毎日の晩御飯は、けっこう、かまぼこぷすぷす切っただけも多い印象だけれど、普通の夕飯が落ち着くし、水上勉さんの「土を喰う日々」は、 関西出身でもあって、文章だけで同じ味がする。
浅野陽（アキラ）さんの「まよい箸」、お行儀の悪さを昇格してもらった。
おしなべて、簡単、手早い、エイッ　ヤーの気合い料理。
調味料も分量も書いてないのに、ちゃんと味も香りも、舌触りも、おまけに喉元から胃にまで食べる楽しみを味わえるし、世界観も覗けて、たかが晩めしの域を超えて、 まな板から、宇宙へと広がる。

「食べるだけが楽しみ」母の晩年の口癖、ワタシもその域にどっぷり。
ただ、母と違うところは、今んとこ、自分で作れること。
メーンはどっかりと作れても、お刺身はけんだけで充分、お肉は付け合せのサラダだけで、豪華肉料理を食べた気分になれるから、何ともこのつつましいこと。
その代り、テーブルの上で、ゆっくりかけて迷いたい。
もう一品、もう一皿が、ゆっくりの食事を楽しませてくれる。
つきだし、八寸、おしのぎ、箸洗い、肴。うん、人生は旨い。
こういうもの、珍味をむさぼるわけでもなく、ちまちま残った食材の始末、おとといが賞味期限だった練り物寄せ集めて、
しかも、この小さな一皿に時間をかけては、本道からそれる。
この夏の一皿、写真に撮っておいた。ガラスの器が多いのは、やっぱり、激しい暑さの夏の食卓。